ドイツではじめての朝!ホテルの朝食で「fertig」を覚えた日。

ドイツではじめての朝をミュンヘンのホテルの一室で迎えた私たちは、もうすっかり目は醒めているのに、ベッドから起き上がらずに感慨に浸っていた。

ああ、君も起きたか。いやはや、私たちはもう、ドイツにいるんだね。

不思議なものだ。それにしても・・・昨日は長い1日だったね。実際、24時間以上あったわけだが。

時差があるからね。同じ日がずーっと続いているような錯覚に陥ったよ。

つまり―――日本に帰る日は、とても短い1日になるんだね。

そうだね。そしてそれが無事、一年後の話だといいのだけれど・・・

そう、私たちはワーホリビザによって1年間ドイツに滞在できるはずだが、現状としてニュルンベルクに3か月分の部屋が借りてあるだけだ。

それ以降のことは、まったく何も決まっていない。

もし、3ヵ月後に住むところが見つかっていなかったら、そのまま日本に帰国しなければならなくなるかもしれないということだ。

まあ、3ヶ月しかいられないことになったら、そのときは貯金を使い果たすまでホテルに泊まりながらドイツ各地を旅しようじゃないか。

少なくとも、今から3ヶ月は確実にドイツにいられるのだ!

そのことを互いに確認し合うと、私たちはベッドから爽やかな気分で起き上がった。

身支度はさっさと済ませ、私たちは出発前から楽しみにしていた、ホテルの朝食バイキングへ、嬉々として向かった。

そこには、想像通りの、いや、それ以上の美味しそうな食べ物がテーブルいっぱいに並んでいた。

種類豊富なチーズがところせましと並べられ、ドイツらしいソーセージもこれまたたくさん!

ハムやサラミなどもそれぞれ何種類もあるし、大好きなスモークサーモンの横にはカラフルなオリーブの実も。マヨネーズで和えたシュリンプサラダもあったな。

そしてさらに感動なのはパン!なんてたくさんの種類のパンがあるのだ!もう、全種類制覇したくなる。

少し離れたところにはシリアルのコーナーもあった。ベースとなるコーンフレークやオーツ麦に自分で好きなだけかぼちゃの種やドライフルーツ系のものを追加できる。

上からかけるミルクも数種類あって、混ぜる種類や配分を変えて何杯も食べてみたくなる。

めちゃくちゃ美味しいシリアル!何杯でもいけそうだ。。。

どれも美味しい。どれも、いくらでも食べていたくなる。だって、大好物しかないのだ!!

カットフルーツもたくさんあった。特に感動したのはスイカ。6月上旬だから少し時期が早いというのもあり、全く期待してなかったが激甘だった。多分スイカだけでも相当食べた。

極めつけは、飲み物の並ぶテーブル沿いに炭酸水のサーバーと2つだけ独立して立っていたジュースサーバー。

クリアなジュースの中にレモンなどの柑橘系フルーツのスライスが入っていて、そこにミントなどのハーブも入っている。そしてそこに生姜も入っている様子。

見た目も美しいそのシュースを飲んでみると、驚くほど爽やかで、しかしどこかとても懐かしい。

ああそうだ、これは「冷やしあめ」の味なのだ。

関西出身の人でないとなじみが薄いかもしれないが、「冷やしあめ」といえば生姜をつかった甘い飲み物で、関西の夏の風物詩である。

子どもの頃は暑ーい日に商店街を歩いているときなんか、両親がよく買ってくれたものだ。

私たちはあれが大好きで、関東に引っ越して来てからも夏になるとどうしても飲みたくなって、自分たちで作ったりしていた。

ドイツに到着後、はじめての朝。私たちは、関西の夏の風物詩を味わうことになるとは。

とにかく、忘れがたい美味しさだった。ちゃんと写真を撮っていなかったのが残念だ。

そんなわけで朝からめいっぱい食べまくる私たち。

そしておかわりに行こうと立ち上がると、ホテルのウェイターが近づいてきた。

(おっ・・・調子に乗って食べすぎたか!?)

と、彼は笑顔で何か一言いった。

ん?

困惑する私たち。

彼はあっと理解し、今度は英語でいった。

「このお皿はもう下げていいですか?」

あっ、なんだ!ええ、もちろん!

すると彼は笑いながら英語でいった。

「ドイツははじめてですか?」

はい、というと、彼は自分はもう長いことドイツに住んでいる、といった。

外見からして、中東あたりから来たようだ。

「旅行ですか?」

私たちはドイツ語を学びにきたのだと言った。

すると、彼は嬉しそうに、では、少しドイツ語を教えてあげましょう!と。

「ドイツ語では「fertig」っていうんですよ。よく使うから、覚えておくと便利です」

ほほう、「fertig!」 さっき彼は私たちにそう聞いたのか!

私たちは彼にありがとうと言った。

彼は笑顔で去っていった。

そしてその後、また皿が空になると彼はやってきた。

そして笑顔で言った。

「Fertig?」

私たちは、今度は笑顔で答えた。

「Ja! Fertig!」

彼は「Perfekt!」と言って、笑顔で皿を持っていった。

その後もいくつか言葉を教えてくれたが、なんだったかな・・・。

とにかく、私たちは彼のおかげで「fertig」という単語を覚えた。

たぶん、これがドイツへやってきて最初に覚えた単語である。

親切なウエイターさん、あのときはどうもありがとう!!「fertig」、決して忘れないよ!

美味しい朝食を満喫しつつ、ドイツ語も学べてご機嫌な無鉄砲姉妹だった。

ああー、本当に美味しかったなー。。。

ちなみに、このとき私たちが泊まったホテルはホテルオイロペイシャーホフ(Hotel Europäischer Hof)。

ミュンヘン中央駅が本当に目の前にある、立地が完璧なホテルだった。

部屋は基本的にシンプルだが、必要なものはそろっているし、朝食はめちゃくちゃ美味しいし、例のウエイターさんなど、ホテルマンたちも親切なので、なかなかに良いホテルだった。

そういえば、日本にいるときに事前にホテルからメールがあったな。

内容は、「気温が高めの日が続いているが、当ホテルには残念ながらエアコンがないので、もしキャンセルをしたいのであればキャンセル料は不要です」的なもの。

私たちは6月ならまあ大丈夫だろうと思い、そのまま泊まったが、やはり何の問題もなかった。

ドイツが異常気象で多少暑くても、日本の酷暑を(しばしばエアコン抜きで)生き抜いてきた私たちには、まだまだ大したことないのかもしれない。。。