ニュルンベルク散策! ①ウンシュリット広場周辺

ひとまず中央広場の市場

とってもお天気のいいこの日、私たちは特段大きな予定もないということで、まもなくはじまるドイツ語クラスの予習だけ済ませると、旧市街地の散策をすることに。

旧市街地の中心部はもうかなり慣れてきて、どこになにがあるかなども感覚がつかめてきたけれど、少し道を外れるともう未知の世界。

ということでこの日は、軽く中央広場の市場を見回ったあと、あえて今まで行かなかった「旧市街地の端っこ」、つまり、市壁の周辺目指して、のんびり歩いてみた。

中心部から少し外れて、ものすごく雰囲気のある建物の立ち並ぶ路地を進んでいくと、なにやらとても素敵な建物を発見。

見るからにおしゃれな建物。

明るい土色の建物に飾り文字、そして真っ赤なドアがとっても可愛い。

そして何といっても、おしゃれがすぎる鉄看板だ。

ドイツのお店にはこういう鉄の飾り看板がよくついているが、どれもとっても素敵なデザインで、これを見て歩くだけでもとても楽しい。

しかしそれにしても、このお店の看板は可愛いな。鍵、というのがすごくいい。無鉄砲姉妹の好みにドンピシャだっ! 

鍵の飾り看板

それじゃあここは鍵屋さんなのかな? と思って調べてみると、どうやら銀製のアクセサリー工房的な場所らしい。なんともおしゃれだ。

そんなおしゃれな場所のすぐ隣に、なんだかおもしろい形の噴水を発見!

Dudelsackpfeiferbrunnen

調べてみると、どうやらこれは「バグパイプ奏者の噴水(Dudelsackpfeiferbrunnen)」と呼ばれるものらしい。

バグパイプから水がぽちゃぽちゃ落ちているのがとても可愛い噴水だ。

さて、この面白い噴水を観察していると、なにやら賑やかな集団が。

そのまま楽しそうに過ぎ去っていったが、ウエディングドレスのようなものを着ていたので花嫁さんと花婿さんだったのだろうか。

なんとも幸せな光景を見ることができて、ほっこりしてしまった☺

ニュルンベルクの街を歩いていると、こうした集団にちょくちょく出会う。

これだけ美しい街だから、確かにどこで写真をとっても様になるから、記念写真の撮影にももってこいなのだろうなあ。

幸せな気分をおすそ分けしてもらえて、満足な無鉄砲姉妹なのだった。

と、ここからは少し余談を。

この場所、ウンシュリット広場(Unschlittplatz)、ある歴史的な場所でもあったりするのだが、少しだけ怖い話なので、ここから先は怖い系が苦手な人はご注意を……。

かなり後になって偶然知ったことだが、実はここウンシュリット広場は、1828年にカスパー・ハウザー(Kaspar Hauser)が発見された場所なのだそう。

教育学などを勉強したことのある人は聞いたことがあるかもしれないが、カスパー・ハウザーというのは野生児に分類される人物だ。

16歳ごろにこの場所で保護されるまで、座敷牢に閉じ込められていたと考えられている。

ここで発見された当初、身元などを尋ねられてもまともに答えることができず、筆談を試すと、「カスパー・ハウザー」と書いたという。

彼は市当局の保護下に入ったが、彼の噂が広まるにつれて多岐にわたる学者たちが彼に関心を抱き、彼にさまざまな検査を行ったり、教育を試みた。

それはある程度の成果を上げたが、特定の内容についての理解、たとえば「神の概念」を理解させることはできなかったとか。

また、彼の感覚機能は発見当初ほとんど麻痺していたが、次第に感覚が蘇っていったばかりか、常人以上の知覚能力を発揮するようになっていった。

それは人々を大いに驚かせたようだが、この能力は彼が一般的な生活に順応していくにつれ、一部を除いて再び失われていったという。

このきわめて特殊な立場で生まれ育った謎多き「カスパー・ハウザー」に関連する事例と検査結果および研究結果は、教育学的な興味深いひとつの事例として、教育学を学ぶ際に未だによく持ち出される。

そんな彼の最期はあまりにも突然で、1833年、正体不明の男に襲われ、この世を去った。

彼は保護されて以来、ようやく自らのことを少しずつ語り始めたころだったようで、それが断片的とはいえ、出自に関連するような内容だったことから、彼の出自が特別だったのではないかという憶測を呼んだ。

特に、彼が監禁されていた地下に関する証言から、かなり清潔で、暖房設備もある場所だったこと、塗装や飾りのあるおもちゃが与えられていたことなどから、それなりの身分だったことが想定された。

今に至るまで、彼を殺害した犯人は明らかとなっていないが、彼の存命中から飛び交っていた彼の出自のなかには「バーデン大公後継者説」まであり、あまりにも謎多きこの少年の人生はその後の彼自身に関する研究はもちろん、自然科学分野、教育分野への影響、そして文学や音楽などの大衆文化への影響も大いにあったという。

結局、謎だらけのまま死んでしまったカスパー・ハウザーの人生は多くの人々に強烈なインパクトを与えたが、大人の思惑に翻弄され、数奇な人生を生きることになってしまった、あまりに可哀想な少年であることは間違いないだろう。

(ちなみに、無鉄砲姉妹が好きなアメリカのシンガーソングライターであるスザンヌ・ヴェガの楽曲にもWooden Horse (Caspar Hauser’s Song) という曲がある。少し不思議な曲だと思っていたけれど、これがカスパー・ハウザーの曲だと知ってから聞くと、なんとも感慨深いものがあるな……)

──のんびり散策回のはずだったのに、余談のせいで少しミステリアスな雰囲気になってしまった……。

というわけで、次回も引き続き散策回を(しかし今度は変な脱線なしで)お届けします!!