「空似言葉」という言葉をご存じだろうか。これは「偽りの友」とも呼ばれ、二言語間で形態は同じにもかかわらず、意味が異なる単語や成句のことを指す言葉だ。
この「空似言葉」がドイツ語にも多く、特に英語とドイツ語なんて「同じゲルマン語族のくせになぜそうなった!?」というような面白いものが多いのだ。
というわけで今回は、そんな「空似言葉」をいくつかご紹介したい。
Giftは欲しい? 欲しくない?
ギフトカードにギフトショップなど、日常生活の中にも当然のように浸透しているこの「gift」という英単語が「贈り物🎁」を意味することは、誰もがご存じのことと思う。
またこのgiftという英単語には「才能」という意味もあることから、最近では才能のことを「ギフト」とカタカナ語で言う人も増えている。
そんなわけで、「ギフトをあげよう!」と言われたら、それが「贈り物」であれ「才能」であれ、喜んで受け取りたいと思うだろう──が。
もしこれをドイツで言われたのなら、簡単には受け取らないでおくべきだろう。
なぜならドイツ語でGiftは……「毒 ☠」を意味するからである。
★das Gift
意味:毒、毒物、毒薬、悪意、憎しみ
──この、英単語の意味との差よ。
なお、ドイツ語で「贈り物」は「das Geschenk」。
というわけで、ドイツではむやみに「Gift」を欲しがらないようにしよう……。
「hell」な場所ってどんな場所?
洋画を見ていると稀に、「Go to hell! (地獄に落ちろ!)」という暴言が飛ぶのを耳にすることがある。
まあ一生使いたくも、使われたくもない言葉だが、英単語の「hell」が「地獄 👿」という意味なのも、かなり有名だろう。
ではドイツで「その部屋は“hell“だ。(Das Zimmer ist hell.)」と言われたら、「そこは地獄のような部屋なのか!?」 というと、もちろんそうではない。
ドイツ語で★hellは「明るい」を意味するからだ。
つまり上の文は、「その部屋は明るいです」となり、お部屋探しをしているとしたら、日当たりのよい「良物件」ということになるわけだ。
なお、直接 hell とは関係ないが、学生時代に同じくドイツ語を履修していたある友人が呟いた言葉で、すごく驚いたことがある。
彼女は課題の長文のドイツ語を見ながら呟いた。
「ドイツ語って、ちょっと怖く見えるよね……」
私はドイツ語が怖く見えたことなど一度もなかった──どころか、ウムラウトたち(特に Ö とか Ü とか)の存在のせいで可愛くしか見えたことがなかったので、すっかり驚いた。
それでその友人に理由を聞くと……
「だって、『die』ばっかりでてくるから。『die』って『死ぬ』の印象が強くて……」とのこと。
これには、目から鱗だった。私は冠詞である「die」から、ただの一度も英単語の「die」を連想したことがなかったからだ。
しかし言われてみれば全く同じ綴りなのだ。ドイツ語で「die」は冠詞だから、尋常じゃない頻度で使用される。「die」からすぐ「死」を連想する人にとっては、ドイツ語は確かにちょっと怖いのかもしれない。
まあ私は言われるまで全く気づかなかったし、言われたあとも普段はいつもすっかり忘れているわけで、やっぱり私にとってドイツ語は怖いよりも圧倒的に可愛い言語なのである。
可愛いウムラウトが大好きなコスモが作った、ドイツ語のLINEスタンプなんてものもあったりします! よかったらぜひご覧くださいÜ💕
Angelで魚を釣る?
さっきは暴言だったので、今度は甘言を。
洋画を見ていて、これまた時々聞く言葉、
「You are my angel!(君は僕の天使だ!)」👼
相手は恋人なのか、子どもなのか。
いずれにせよ、さっきとは違ってこちらは言っても言われても幸せな言葉だ。
このように、ご存じの通り英単語のangelは「天使」を意味するわけだが……ドイツでは、Angelが魚を釣るらしい。
★die Angel
意味: 釣りざお、蝶番
……「釣りざお🎣」か。天使とはかなりかけ離れてしまった。
なお、ドイツで天使は「die Engel」とのこと👼
空似言葉とは全く関係はないが、ドイツ人のあるおじいさんがおばあさんのことを「彼女は私のSchutzengel(守護天使)なんだ」というのを聞いたとき、ものすごくきゅんとした……。
というわけで今回は3つの「空似言葉」をご紹介したが、このほかにもドイツ語にはたくさんの空似言葉 Falsche Freundeがあるので、是非いろいろ探してみていただきたい。