もうすぐカーニバルの時期ですね!
日本ではあまり馴染みのない方も多いと思いますが、
羽根つきの豪華な衣装で踊るブラジルのリオのカーニバルや、
怪しげな仮面をつけるヴェネツィアのカーニバルは日本でも有名です。
そして実は、ドイツにもとっても魅力的なカーニバルがたくさんあります。
今回ご紹介するのはそのなかでも特に古い歴史を持つ、ゲルマン文化の色濃い、黒い森地方の小さな町のカーニバルです。
そもそもカーニバルとは?
カーニバルは日本語では謝肉祭と呼ばれ、キリスト教における四旬節(受難節などとも)の前に行われるお祭りです。
四旬節というのは、イースター(復活祭)の46日前の水曜日から復活祭の前日までの期間のこと。
イースター(復活祭)はその名の通り、十字架にかけられて死んだイエス・キリストが3日目に復活したとされる日なので、キリスト教世界においてはとても重要な祭日です。
最近はその時期になると日本でもイースターエッグやイースターバニーなどをよく見かけますが、🥚は復活の象徴、うさぎは多産なので豊穣と生命の象徴とのことで、いずれも春の訪れを連想させます。
そんなイースター直前の四旬節の間は、かつては「断食」を行っていました。
これは、キリストが40日間荒野で断食・修行をしたのにちなんでいるとのこと。
(四旬節が46日と、キリストの断食期間より6日多いのは、そのうちの6日ある日曜日は断食をしなかったからだそう。)
現在は、完全に食事を断つ宗派はほとんどないようですが、今でもこの期間は節制を心掛けたり、慈善活動が奨励されたりするようです。
つまり四旬節というのは、キリストの復活を盛大に祝う復活祭前の準備期間というわけです。
・・・となると、わかりますね。
「明日から断食・・・」
「明日から、肉、食えないのか・・・」
「でも、今日まではいいよな!?」
「肉・・・食わねば!!!!!」
――ってことで、謝肉祭、カーニバル爆誕!(←雑)
ちなみにこのカーニバルは基本的にカトリックのお祭り。
だから、私たちのいたニュルンベルクなどのプロテスタント多めな地域ではそれほど大々的には祝われていませんでした(多少子どもたちのパレードはありましたが。)
だからもしドイツでカーニバルを存分に楽しみたい場合は、カトリックの多い地域(ドイツ南部やライン地方など)に行ってみましょう!
ドイツのカーニバルの呼び名はいろいろ!
ここまで謝肉祭を「カーニバル」とずっと読んできましたが、実はドイツでは「カーニバル」以外にもいろんな呼び名が!
カーニバル(Karneval)
まず、謝肉祭を普通にカーニバル(Karneval)と呼ぶのはドイツ北西部を中心とした地域で、 ドイツ3大カーニバルのうちの2つであるケルンやデュッセルドルフなどの有名なカーニバルがあります。
とくにケルンはドイツ最大のカーニバル・パレードで、その列の長さは7kmに及び、このパレードを身に100万人がこの街を訪れるとのこと。
仮装も多種多様で、時事ネタなんかもあってとてもおもしろいそうです!
ファッシング(Fasching)
カーニバルと同じか、それ以上に広い地域で呼ばれているのが、このファッシング(Fasching)という名。
ドイツ東部~南部までの広範囲で、この呼び名が使われています。
私たちのいたニュルンベルクでも、この名前で呼ばれていました。
「ファッシング」呼ばれる地域で有名なのはやはりミュンヘンのファッシングでしょう。
町全体が仮装パーティー状態で、渋谷のハロウィンの夜みたいになるようです。
さすが、お祭り好きのミュンヘン!
ファセナハト(Fasenacht)
ドイツ3大カーニバルの最後の1つであるマインツでの呼び名は ファセナハト(Fasenacht)。
マインツのファセナハトは、11月11日11時11分にファストナハトの11のきまりが読み上げられて始まるそうです。
これはマインツのみならず、ほかの地域でもこの日(聖マルティンの日でもある)を謝肉祭の幕開けとすることが多いそうです。
11月11日・・・日本なら、ポッキー&プリッツの日ですね!
ファスネット(Fasnet)
そのほかにも実は地域特有のいろんな呼び名があるのですが、今日ご紹介する黒い森地方では「Fasnet(ファスネット)」と呼ばれます。
そしてこの黒い森地方のファスネットは、ほかの地域のカーニバルとは雰囲気が大きく違います。
そんな異色のカーニバル、ロットヴァイルの「ファスネット」をご紹介します!
黒い森地方のロットヴァイルのお祭り
黒い森地方ことシュヴァルツヴァルト(Schwarzwald)は、葉の色が濃い針葉樹が密集して生えているためにいつでも暗く見えるため、「黒い森」と呼ばれるようになった地域。
ドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州に位置するこの地域に、ロットヴァイル(Rottweil)という美しい小さな町があります。
人口2万5千人程度のこの町は、実はドイツ最古の都市の1つ。
そんな歴史あるこの町では、ほかの地域とは違い、ゲルマン土着の文化と伝統が色濃く残った、ドイツで最も古いかたちの謝肉祭のパレードを見ることができます!
そのためこのときだけは、静かで落ち着いたこの町も、世界中からの観光客で大いに賑わうのです。
愚者たちのパレード Narrensprung
この町のファスネットでとりわけ特徴的なのが、日本のなまはげ👹を連想させる、少し不気味な木のお面をつけた人々によるパレード。
このパレードはNarrensprungと呼ばれ、さまざまな表情の個性的なお面をかぶった愚者たち(=「ナロ Narro」とも)が、ブラスバンドの軽快な音楽に合わせて行進します。
ちなみにこの愚者たちは決して何も語ることはなく、ただ「ホーホホホホ!」と甲高い声を発します。
それがなんともいえない非日常感を生んでいて、まるで本当におとぎ話か魔法の世界に入り込んだような気分になります。
パレードの音楽は2分ほどの短い曲で、ちょこちょこ休憩はあるものの、この1曲がパレードのあいだ中、ずーっと繰り返されます。
この音楽が流れている間、愚者たちは身体についたたくさんの鈴を鳴らしながら踊るのですが、その踊りと動きがとっても滑稽で、しかも癖になる。。。
愚者たちのお面は、本当に個性豊かで魅力的!
男性と女性の違いはもちろん、表情もそれぞれが少しずつ違っていて、本当にこんな顔の人たち、って気がしてきます。
ちなみに愚者に扮する人の中には子どもたちもいっぱいいます。
お面や衣装は大人と一緒なので、愚者のミニチュア版みたいでかわいい!
この愚者のお面、最初は少し不気味に感じますが、ずっと見ているとそれぞれとても愛嬌があって、深い愛着がわいてきます。。。
ちなみに彼らは人前では決して仮面を取らないようで、それがまたミステリアス。
とはいえ、パレードから外れた路地裏に愚者の休憩場所みたいなのがあって、そこでは子どもたちは普通にお面を取ってました。あっ、普通の人間だ、と妙にほっとしました(笑)
”Narro, kugelrund!”
そしてもう1つ、とーっても印象的なのが、子どもたちが歌う歌。
この歌を愚者たちに向かって大きな声で元気よく歌います。
すると愚者たちは「よくできました!」と言わんばかりに(本人たちは「ホーホホホホ!」としか言いませんが笑)たくさんお菓子をあげます。
どうも午前中と午後で違う歌を歌うようで、あるタイミングから子どもたちが歌う歌が変わりました。
この歌を子どもたちが 愚者たちに向かって一生懸命歌う姿は本当にかわいい!
その様子を見ているだけでも楽しくて幸せな気分になれます。
ちなみにこのとき彼らが歌っていた歌詞を後で調べたところ、
Narro, kugelrund,
d‘ Stadtleut‘ sind
wieder älle g’sund.
と歌っていたようです。
古いドイツ語ですが、意味は
「愚者よ、丸々と太り、
町の人々はふたたびみんな健康に!」
みたいな感じでしょうか。
(正確な訳がわからなかったので雰囲気です笑)
ちなみにこの歌は、大人が歌ってもお菓子をもらえます!
でも歌うのが恥ずかしい場合は、愚者たちを真似て「ホーホホホホ!」と声を掛けてみてください!。
かなりの確率でお菓子がもらえますよ!
ちなみにこの愚者たちは、いたずらも大好き!
愚者のいたずらにご用心!
パレードを見ていると、大人子ども関係なくこの愚者からいたずらされることになります。
特にこのふわふわのついた棒を持った愚者にはご用心(笑)!
このふわふわで顔などをくすぐられます!
ちなみにこのふわふわはなぜかとーってもいい香りがします・・・。
彼らの棒は、こんなことにも使われます。
なんとも軽やかなジャンプ!
爆竹のような音が聞こえたら、音のなる方を見てみてください。
2人の馬追が馬を鞭で追い立てていますね。
爆竹のような音は、鞭の鳴る音でした。
ほかに、鶏にまたがる愚者も!
5時間くらいパレードを見ていて、1度しか出会わなかったレアキャラ!見つけたらラッキー?
愚者オリジナルのスクラップブック
なかにはお菓子と棒以外にあるアイテムを持っている愚者も。
おもむろにかばんから「それ」を取り出します。
そう、それは愚者オリジナルのスクラップック!
気に入った見物人を見つけると、「ほらみて!おもしろいでしょう!」とでも言うように、自慢げにページをめくっていきます。
とーってもユニークな愚者たち!
「わー、すごい!」と素直に驚いてあげると、とっても喜んでくれます。
なんだかかわいいですね。
ロットヴァイルのパレード情報
なお、ロットヴァイルの2020年のパレードは 2月24日(月)の午前8時からと2月25日(火)の午前8時と午後2時の予定とのこと!
毎年やっている伝統行事なので、興味のある方は是非行ってみてくださいね!
参考:ロットヴァイルの町のファスネット紹介ページ(ドイツ語)
最後に。
ドイツでは、この謝肉祭の時期を「5番目の季節(Die Fünfte Jahreszeit)」と呼ぶそうです。
それだけ、ドイツ人にとって重要なイベントなのかもしれません。
もしこの時期にドイツを訪れることがあれば、是非このドイツの「5番目の季節」を楽しんでください!